パワー意識診断表とは: リーダーシップの源泉となっているパワーを「どのように感じているか」、相手から「どのように感じられているか」を診断するためのフィードバック表 6. パワー意識診断 ( 1 ) 使用資料 リーダーが揮う < 影響力 > は、影響を受ける側の意識に関係しています。当のリーダーに対して感じているものが、 < 恐れか、親しみか > 、それとも < 利害か、義理か > などによって影響のあり方も変ってきます。この診断表を使うことによって、リーダー自身(パワー意識診断表(自己))や周囲の人(パワー意識診断表(他人))が、このリーダーから感じる < 影響力の源が何であるか > を調べることができます。 ■ 診断表 · パワー意識診断表(自己) · パワー意識診断表(他人) ( 2 ) 展望 意識のあり方は、人間行動に極めて重大な影響を及ぼします。「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」などといいますが、いま目前に幽霊を見ている人にとっては、とても“枯れ尾花”どころはありません。幽霊への対応に大わらわなはずです。人間は、物事の実体に反応するのではなく、自分の意識(受けとめ方、すなわち、認知内容)に対して反応するのです。 パワー(力)も例外ではありません。実際にパワーを持っているかどうかよりも、 < パワーを持っていると思われていること > が、他人に対する影響力の基盤になります。パワー意識診断表は、そうした意識を調べるための診断表です。人が違えば受けとめ方も変りますから、自分で思いこんでいる < 自分のパワー > と他人が認める < 自分のパワー > とが同一であるとはかぎりません。そこでパワー意識診断表にも、自己記入用と他人記入用の 2 種が準備されています。 パワー意識診断表は、状況対応リーダーシップ ® に準拠して作成されています。ところが、状況対応リーダーシップ ® では、 < 仕事別に認識する > ことが重要なポイントになっています。いいかえれば、パワー(力)もまた < 仕事別に認識する > ことを前提に考えねばなりません。 他方、パワーは容易に < 人間の資質 > と受けとられてします。その結果、 < ある仕事に関してはパワーを持っていても、他の仕事に関してはパワーを持たない > という状態が容易に呑込めないようです。事実、 < パワーを持つ > という表現が不自然と感じられずにスンナリと受け入れられることからもわかるように、パワーは < 持たれる > ものと感じられ、その背後に < パワーを持つ人 > を予想させます。 では、状況対応リーダーシップ ® では、パワーをどのように捉えているのでしょうか( <10. タスクの捉え方 > 参照)。状況対応リーダーシップ ® では、パワーの < 意識 (Perception)> に着目します。すなわち、パワー意識診断表が映し出すデータは、パワーそのものではなくて、 < パワーの感じ方(意識) > なのです。そのような感じ方(意識)は、 与えられた課題や仕事に対するフォロアーのレディネス・レベル や その課題に対してリーダーが持つとフォロアーに感じられるリーダーの力量 で異なります。その意味で、パワー(意識)もまた、仕事別、事柄別にデータ化され、認識されるべき必然性があります。繰り返し強調すれば、 パワー意識診断は < パワー意識 > の診断であり、 < パワー > の診断ではありません 。 既述のように、本診断表は状況対応リーダーシップ ® に準拠して作成されています。したがって、状況対応リーダーシップ ® を知らない人に対しては、効果に限界があります。十分な効果は期待できません。診断対象者に対して、事前に、状況対応リーダーシップ ® ・セミナー参加の機会や関連文献を与える、などの措置を採っておくことが大切です。 ( 3 ) パワー意識自己診断 この目的のためには、 < パワー意識診断表(自己) > を使います。記入の仕方そのものは、診断表中に記載されていますが、ここではそのステップを確認しながら解説します。 ステップ ① 第 1 頁から第 2 頁にかけて、 21 対(ペアー)の文による設問があります。診断表に記載の指示に従い、各ペアー(対)文について、それぞれ 3 点を配分して下さい。 ② 第 1 頁から第 2 頁にわたる設問の記入が終ったら、第 3 頁上段に列記されたパワー基盤の定義に目を通し、次いで中段の関係式(A+B+ C +...= 63 )の各枠の中に、各設問ペアーについて配分した点数を、Aごと、Bごと、等々、合計数を、それぞれ記入して下さい(依存パワーの判定)。 ③ 上記の関係式の記入が終ったら、それぞれの合計数を同頁下段の < 依存パワー・グラフ > 中の該当箇所へ転記します(依存パワーの診断)。 ちなみに、こうして得たパワー基盤プロファイルは、診断対象者の < パワー依存度 > の自分なりに認知(自己認知)したパターンを示しています。つまり、 < 自分で思う自分のパワーの自分における配分 > パターンが示されているわけです。しかし、それだけでは < 自分だけの世界 > の話ですから、他人に対する影響力(つまり、リーダーシップやマネジメントや経営管理)が問題になる現実社会に処すための < 指針 > としては、有用なデータにはなりません。そこで、 ④ 第 4 頁の < 依存度の相対比較 > に、 < 周囲の標準的他人 > が示すであろうパワー基盤依存パターンと < 自分の > パワー基盤依存パターンとを比較し、比較の結果を診断表第一頁にある 0 ~ 9 の尺度(スケール)を使って記入して下さい。 ここでは、自分の < パワー基盤に対する依存パタ-ン > を他人との比較で捉えているのですが、比較の対象としては、同診断表にもあるように同レベルの人とか、職場の仲間とか、 < 自分にとって標準的な > 人物を選ぶことが重要です。さもないと、比較すべきでないものを比較してしまう恐れがあります。 ⑤ 次に、 < 依存度の相対比較 > で得た数値を、第 4 頁下段の < パワー依存度―他人との比較 > グラフへ転記して下さい。 以上で、 2 種のデータが得られました。すなわち、 < 自分で思う自分のパワーの自分における配分についてのデータ > と < パワー配分のあり方の他人の場合との比較から得たデータ > の 2 種です。こうして得られた 2 つのデータは、このままでは、それだけのことに過ぎませんが、これらのデータをもとに: a. 自分のパワーの配分や使い方は、妥当かどうか?(自分自身として、また、他人との比較で) b. 自分が依存するパワー基盤は、自分のリーダーシップ・スタイルと適合しているか否か? すなわち、自分のスタイルは、それにふさわしいパワー基盤に支えられているかどうか? c. 自分がリードする仕事の領域で、対象となるフォロアーたちの仕事別レディネス・レベルと自分のリーダーシップ・スタイル(プライマリー・スタイル)、および、自分のパワー基盤の使い方(依存パターン)は、適合しているかどうか? d. 今後、自分として培うべきパワー基盤はどれか? その基盤の開発について、どう計画し、どう遂行すべきか? e. その他 など、考えを廻らせることによって、いろいろな事柄へのヒントが得られます。ちなみに、スタイルとパワーが呼応していなければ < 空威張り > 的なリーダー行動になってしまい、いくらスタイルとレディネスが適合していても < 格好だけ > のリーダー行動と受けとられるおそれが出てきます。 さらに、 < パワー意識診断表(他人) > を使って同種のデータを職場の仲間など周囲の人たちからも収集し、これを < パワー意識診断表(自己) > から得たデータと比較・検討すると、思いもしなかったことが分かるなど、自己啓発のための重要な資料となります。 ( 4 ) パワ-意識他人診断 進め方は、前項「パワー意識自己診断」の場合に準じて下さい。以下の説明はパワー意識他人診断の要点、ポイント、および特異点など、主要なポイントに絞ってあります。 ■ 他人診断は、他人からのフィードバックを求める作業です。診断対象者を < 熟知している他人 > のほうが、概して正確なフィードバックをしてくれるものと思われます。記入者には、被診断者を < 熟知している他人 > を選んで下さい。 つまり、他人診断を依頼する相手は、 < 職場生活を通して熟知しあっている職場グループのメンバー > とか、 < 家庭生活など、インフォーマルな状況で互いに熟知している人たち > とか、インタクト・グループ(メンバー同士がある程度以上に知り合った既成グループ)内のメンバ-を選ぶのが賢明です。もちろん、診断対象者は < 絶対この基準で選ばなければならない > ということはありませんが、なんらかの基準を立てて選ぶことは大切です。基準の如何で得られる < データの質 > が変ってくるからです。 したがって、ストレンジャー・グループ(互いに未知のメンバーから構成されるグループ)を対象とした公開研修プログラムなどでは、メンバー相互の知己化がある程度すすんでから、この診断表を使うべきだ、といえましよう。 ■ 集合研修プログラム等の場で本診断表を使用する場合、使用を < 自己診断 > に限るときは問題はありませんが、 < 他人診断 > を併用する場合は、上記のように < どのような他人に記入させるか? > に併せて、 < 診断表をどのように集めるか? > 、 < だれが、どこで、いつ診断表を処理するか? > 等々の問題もあります。 < 結果が自分にマイナスに作用する > と記入者が感じていれば、よい結果は得られません。したがって、 < 公正な第三者 > が処理し、 < 記入者の匿名性が守られる > ことを保証することが大切です。その意味で、記入済の診断表(回答)は、封をして第三者機関へ直送させるとか、研修プログラムの場へ本人が携行してくるとか、なんらかの工夫をするべきでしょう。 たとえば、診断表自体には記入者の氏名は記入しないことを、事前にハッキリ知らせておく、などの方法を講じておくこともよい方法でしょう(だれが回答しだれが回答しなかったか、を知るためには、封筒に番号を付して回答を識別するといった方法も考えられます)。 ■ < 他人診断 > は、もちろん研修プログラムに先立って記入してもらわねばなりません。したがって、記入者に対する記入依頼を事前に行うことになりますが、記入や記入済診断表回収に要する日数・時間を考慮して依頼を出す必要があります(通常は、 2 週間程度)。 ■ 研修プログラム等の場で本診断表を使用する場合、他の参加者のデータを公開する(情報交換)することが役立ちます。つまり、他人診断結果の場合は、結果を集計(表化)し匿名化して発表、ないし、掲示するなど、また、自己診断の場合は、参加者同士でデータを見せ合い討議する機会を設けて下さい。 こうしたデータの見せ合いを通じて、参加者グループの < ノーム (Norm) 、つまり“相場”または、“その集団の標準” > が分かるという利点があります。ノーム(標準)を知ることによって、心理的安心感が得られると共に、同病相憐れむ心理(「赤信号、みんなで渡れば怖くない」心理)が作用して、その後の処置やアクションに弾みがつくという利点が生まれます。この利点は、横並び指向の強い参加者グループの場合にはとくに顕著ですから、採点後のデータ公開はぜひやってみたいものです(ただし、結果を公開する場合、必ず参加者の了解を得て下さい)。 ■ < パワー意識(他人)診断 > の結果は、 < 自己診断 > の結果や他の < 他人診断 > の結果と相互比較することができます。 こうした比較が、新しい発見につながったりします。したがって、 < 自己診断 > や < 他人診断 > の結果を一覧性のある形に要約できると便利です。そのような目的のために、後述する < 総合プロファイル > が工夫されています。 ( 5 ) 総合プロファイル 状況対応リーダーシップ ® では、( 1 )リーダーシップ・スタイル、( 2 )レディネス・レベル、そして( 3 )パワー基盤、の 3 要素は相互に相関していると考えます(関連リーフレット < パワー(力)とパワー意識診断 > 、および、生産性出版刊 < 行動科学の展開 > 参照)。こうした相関を踏まえて、これら 3 要素に関するデータを 1 つのデータに総合するためのカルテとして < 総合プロファイル > が考えられました。 なお、本プロファイルは総合表であり、本表を使ってデータを求めるわけではありません。基礎データは他の診断表に求めねばなりませんが、関係する診断表は、( 1 ) < リーダーシップ・スケール > のリーダー用とフォロアー用、( 2 ) < レディネス・スケール > のリーダー用とフォロアー用、( 3 ) < パワー意識診断表 > の自己用と他人用の 6 種です。これら各診断表の使い方については、それぞれの診断表に記載の記入法、ならびに、本ガイドブックの該当章を参照して下さい。 では、 < 総合プロファイル > の標準的な使い方を次に説明しましょう(なお、以下の説明では、個々の職責に対するレディネスと職位全体(職責群)に対するレディネスという区別が使われますが、必要に応じ、 <4. リーダー行動診断―特記事項 > を参考に以下をお読み下さい)。 ステップ ① < リーダーシップ・スケール > 第 2 ~ 3 頁(リーダー行動判定表)で得た個々の各職責に対するリーダー行動のスタイル(まとめ欄に記入したリーダー行動のスタイル)を参考に、職位(つまり、職責群=個々の職責の全体)に対して採っているリーダー行動のスタイルを確認して下さい。 この場合、リーダーとフォロアーが話し合って確認した < リーダーシップ・スケール > を使うべきです。リーダーだけ、ないし、フォロアーだけの観点で作成した < リーダーシップ・スケール > によっても、 < 総合プロファイル > を作成することは可能ですが、データの有効性が限られます)。 ちなみに、職位(職責群)に対するリーダー行動のスタイル(そして、レディネス・レベル)は、個々の各職責に対するリーダー行動のスタイル(レディネス・レベル)の < 平均 > ではありません。職位(職責群)に対するリーダーシップのスタイル(レディネス・レベル)を求めるには、個々の職責に対するリーダーシップ・スタイル(レディネス・レベル)を通覧し、職責相互間のウェイト、等を考慮して、職位に対するスタイルなり、レディネス・レベルなりを求めて下さい。 ② こうして得られた職位(職責群)に対するリーダーシップ・スタイルが確認されたら、 < 総合プロファイル > 表面中段のリーダーのスタイル欄の該当欄にチェックマークを記入して下さい。リーダーとフォロアーのすり合わせが済んでいないために、リーダーが付けた結果とフォロアーが付けた結果を併記しなければならない場合は、リーダーの結果とフォロアーの結果を色分け等の方法で区別して記入して下さい(たとえば、リーダーの分を赤鉛筆で記入し、フォロアーの分は普通の鉛筆で記入するなど)。 ③ < リーダーのスタイル > 欄の記入が済んだら、職位(職責群)に対する総合的レディネス・レベルを求め、本診断表の < フォロアーのレディネス > 欄のスケールの該当の箇所にチェックマークをつけて下さい(この場合も、リーダーの結果とフォロアーの結果と区別して記入して下さい。ただし、上記のスタイル記入の区別と同一の区別法で記入すること)。 ④ 次いで、 < パワー意識診断表 > から得た依存パワーの数値を < 依存パワー・グラフ > ヘ転記して下さい。なお、転記にあたっては、 < パワー意識診断表 > 上ではパワー基盤がアルファベット( a, b, c ) 順に並んでいるのに対し、 < 総合プロファイル > ではレディネス・レベルに対応させて、パワー基盤が並べられていることに注意して下さい。 ⑤ 表面の記入が終ったら、裏面を表面の場合に準じて記入して下さい。ただし、記入データは < リーダーのスタイル > と < フォロアーのレディネス > については、表面に記入したデータと同じデータを使って下さい。 また、パワー意識についてのデータは < パワー意識診断表 > の第 4 頁 2 -B:パワー依存度 < 他人との比較 > グラフから転記して下さい。 これで < 総合プロファイル > の記入が終りましたが、このプロファイルを完全に記入するためには、 < リーダーシップ・スケール > 、 < レディネス・スケール > 、および、 < パワー意識診断表 > のそれぞれについて、リーダー(他人)とフォロアー(自己)のあいだのデータすり合せを行わなければなりません。しかし、実際問題として、こうしたすり合せを行うには、時間の掛かるメンドウなことでもあります。その結果 < 総合プロファイル > が、いつまでたっても完成しないようでは、結局役立たないことになってしまいます。そこで、実用的には、リーダーからの(フォロアーからの)データだけを使って < 総合プロファイル > を作成する便法も使うべきでしょう。 ( 6 ) 拡大活用の例 < パワー意識診断表(他人) > の使い方のバリエーションとして、次のような使い方があります。集合研修プログラムの場などで、参加者を順番に選び、選ばれた参加者( < フォーカル・パースン > と呼びます)を対象に、残り全員が < パワー意識診断表(他人) > をつけて、フィードバックし合う方法があります。もちろん、全参加者が順繰りに診断対象者(フォーカル・パースン)となり、フィードバックを繰り返していくわけですが、これによって、互いの < パワー意識 > に関する情報交換ができることになります。 |




