目標による管理(MBO)と状況対応リーダーシップ®の活用<抜粋>

ポール・ハーシィ著 
網あづさ 抄訳 山本成二 監修

*状況対応リーダーシップ®は、株式会社AMIが管理する登録商標です。

はじめに

 <目標による管理 (MBO)>の概念は、1950年代前半、ピーター・ドラッカーによって紹介され、その後急速に発展した。ジョージ・オディオーンやジョン・ハンブル、その他多くの人々の尽力で、様々な組織集団(産業界、教育界、政界、軍隊等々)のマネジャーたちが、<目標による管理>を管理概念の土台として自らの組織を運営してきた。しかし残念ながら、<目標による管理>は、支持者や実際に応用した人々が期待していたほどには成功しなかった。なぜだろうか。そこには重大な要素、<リーダーシップ・スタイル契約>が欠けていたと、筆者らは考える。ほとんどの<目標による管理>では、上司も部下も目標について合意することばかりに集中し、目標達成を促す上司の役割、つまり上下間で<話し合う>ことには、ほとんど関心が向けられていないのである。 
<略>

目標による管理の落とし穴

 目標による管理手法に備わっていて、他の管理システムにはない特徴は、職務(仕事)目標設定と評価に、上司と部下の両者が参加することである。職務目標設定に部下を参加させることによって、部下はより責任感を持つようになり、組織が一方的に与えた職務よりも効果的に達成されるようになる。目標による管理の問題点 ― および、成功例の少ない理由 ― は、部下の職務達成に助力を与える上司の役割が明確にされていないことである。部下の職務達成の援助に際して、上司のリーダーシップ・スタイルを協議の上決めれば、目標による管理によって、より優れた生産成績をあげられる。ゴルファーが、キャディの助けをかりながら、コース上のボールのころがり具合をみてクラブを選ぶように、上司も自分の部下の助けをかりて、協議決定したリーダーシップ・スタイルを採るべきである。では、ポール・ハーシィらによって開発された「状況対応リーダーシップ」に注目してみよう。

<略>

状況対応リーダーシップと目標による管理(MBO)

 <目標による管理>では、リーダーと部下の間が、仕事目標と達成結果の評価方法について合意に達したのち、リーダー行動は一般にS4(低協労/低指示)スタイルに移ることになっている。だが、状況対応リーダーシップによれば、S4が効果的に機能するには、部下が目標を達成する意欲と能力をもちあわせていなければならない(つまり、R4)。しかし、レディネス・レベルは仕事によって異なるからいつもこのようにうまくいくとは限らない。経験の足りない、またやる気も起こらない仕事にブツかることがある。リーダーと部下がいったん仕事の目標を決定したら、次のステップは(実際にはあまり行われていないが)、リーダーの適切なリーダーシップ・スタイルを討議・決定することである。このようなリーダーシップ・スタイル契約(決定)が行われないと、あとで問題が生じる。たとえば、リーダーが部下を全く放っておいたとして、この低協労/低指示な委任的リーダーシップ・スタイル(S4)は果たして適切だろうか、それとも不適切だろうか。この適不適は次の診断のときまで気付かないことになってしまう。S4スタイルは、部下がかなりのスキルをもっていて、手順もよく知っており、意欲もある場合にのみ効果的である。逆に、目標や仕事について決定した後でも、リーダーが部下のまわりを相変わらずうろうろして指示を与えているとすると、このリーダーの高指示/低協労スタイル(S1)によって、部下は能力のある分野の仕事ですら遂行できなくなってしまう。
<略>